[6]遺言書は自分で書かなければならないのですか?

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結論から申し上げますと、そういった選択も可能ですし、極力、文字を書く作業を回避することは可能です。

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何度も掲載して恐縮ですが、前記事の冒頭で書いた、4タイプの遺言書作成方法に沿って、ご説明いたします。

それでは、前記事の再掲からです。

①自分で遺言書本文を直筆で書いて、遺言書の保管も自分で行う。

 →これを「自筆証書遺言」と呼ばれています。

②自分で遺言書本文を直筆で書いて、遺言書の保管は役所(法務局)に頼む。

 →こちらも「自筆証書遺言」ではありますが、「遺言書保管制度」の併用です。

③他人(公証人)に遺言書を書いてもらって、遺言書の保管も役所(公証役場)に頼む。

 →こちらは「公正証書遺言」と呼ばれています。

④自分で遺言書を書いて役所で封印して、遺言書の保管は自分で行う。

 →こちらは「秘密証書遺言」と呼ばれています。

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まず①と②についてですが、遺言書を手書きで書く文字数(分量)という意味では、一番多くなります。

最近は法改正により制度が若干変わり、遺言書の本文については引き続き自筆での作成が必要ではありますが、財産目録については通帳コピーや登記事項証明書、それからパソコンで作成したものでも、基本的にはOKとなっています。

まず遺言書本文、という意味についてですが、例えば「○○銀行の口座番号○○の預金は○○に相続させる」といった規定となります。

この他、日付、自署など、自筆証書遺言として欠かせない形式面についても、自筆である点は従来通り変わっていません。

それでも、財産目録としてパソコンが使えるようになったのは、ある意味、利便性が高まったともいえるでしょう・・・(コピー等に自署など一定の記載は要ります)。

なぜなら、誰にどの財産を分配するなどの遺言書本文であればまだしも、口座番号の数字を一つ誤記しただけでも、そのページ全部を書き直した方がいいよ、とされていたぐらいですので・・・。

所定の訂正方法はあるわけですが、自筆証書遺言の弱点の一つとして、本当に本人が作成した遺言書なのか?という疑問が出てくると、途端に正当性が厳しくなってしまう側面がありますので(なにせ「いや、わたしが書いたんだよ」と本人は反論できないのですから)、訂正方法は決まっていても、ミスが無い状態で完成させておく、という方が、少しでもリスク低減にはつながります。

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といっても、①の場合、改ざんチェックができないというリスクは本質的に避けようがありません。

例えば、領収書の金額を書き足して不正行為をするのに似ていますね。

「○○に100万円を相続させる」と「○○に1000万円を相続させる」について言えば、もしかしてゼロ「0」という文字が書き足されているのかどうか、パソコンでの安全な通信手法としての改ざんチェックは簡単に実用化されていますが、手書きだと、とにかく信ぴょう性が低いのは現実の課題でしょう。

もちろん、民法上、遺言書を変造した場合(他にもいろいろと法定されています)は、相続欠格といって、その方は相続することができなくなります。

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②は、この改ざんという意味では、全く心配は要らないでしょう、と言えると思います。

なにせ、法務局で遺言書原本も保管してもらえますし、スキャンした電子データでも保管されますので、よっぽどのことが無い限りは、原本と電子データの両方を改ざんすることは、まぁ・・・、無理です。

そこは、わたくし自身は法務局の電子情報処理組織(なんて、聞きなれない名前で法律上呼ばれているようですが、要するにサーバのことですね)の仕事は手掛けたことはありませんが、これでも情報通信産業にいるエンジニアの端くれですので、ある程度、どういった構造になっていて、サーバデータの改ざんが如何に困難なことであるかは熟知しておりますので、そういった観点については信用いただけますと幸いです。

ただ、元々の本記事の主テーマは、手書きの手間はどれだけ大変なんですか?ということですので、まぁ、そういった意味では、②を作成するのも、①を作成することについても、本質的には手間の差分は無いと思ってください。

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さて、一つ飛ばして④となります。

実は、この秘密証書遺言というのは、あまり使われていないそうです。

でも、一番のメリットは、比較的定額であり、なおかつ遺言書全文をパソコン等で作成しても、一向に構わない、ということになります。

最後、公証役場で封書に遺言書を入れて封印する際に自署が必要になるだけです。

ただ、検認は要るのと、①や②に比べれば数万円単位で高額になる可能性が高いです。

そうはいっても、例えばパソコンの印刷フォントを十分配慮しておけば、「100万円」を「400万円」に改ざんするような細工をしたところで、そういった不正にはある程度対応できるのではないかと思ったりしております。

少なくとも金額の記載は、アラビア数字ではなくて、漢数字で記載するのも一手ですよね。

いずれにしても、毎年、遺言書を作成したいが、かといって、毎度全文手書きというのも、気が付かない記載ミスをしている可能性が出てくることを想定すると、パソコンに元ファイルを収めて置き(しかも、そのファイルを暗号化するとか、改ざん防止措置をしておくとかしておいて)、それで、作成の都度、ファイルを呼び出して開いて、その状況に応じて必要な修正を施していく、というケースにはマッチしているとは思います。

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さて、最後は③です。

こちらは、そういった意味では、一番、遺言書作成の幅が広い作成手法となります。

通常ですと、公証人と事前に面談をするなどして(あるいは、行政書士等に依頼をしておいて)、その際のメモ書きはパソコン等で提出しておき、いざ、本番の公正証書遺言作成の際には、自署をするというだけで済む、という点もメリットがありますし、改ざんリスクも基本的には極めて低いと言えます。

そして、ここもメリットではあると思いますが、公証役場に赴くことができない状態(健常者ではなく医師の診断書での証明が前提です)であっても、公証人が出張してくださるという点も、他にはないスタイルです。

そして、自署すらできない場合であっても、この他、障害等により健常者のような遺言書作成が困難であっても、その状況に応じて対応が可能です、という点が①②④とはもっとも異なります。

ただし、公正証書遺言の最も一般的なスタイルである、公証役場での公正証書遺言作成と比べて、費用負担増は避けられません。

また、そもそも論ではありますが、公正証書遺言作成に関する費用は、公証役場への支払手数料一つをとっても、他の①②④よりも高額となります。

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以上、遺言書作成のうち、特に自筆でどこまで何を作成するのか、という点に焦点を当てて、遺言書作成についてご紹介いたしました。

なお、毎度の記載で恐縮ですが、できるだけ制度の趣旨をわかりやすく表現するために、あえて、法律上の厳密さを最優先にしていない文章となっておりますので、この点は、ご了承いただければと思います。

当事務所にご相談をいただきます際には、親切丁寧かつ、法律上の正確さを伴ったご説明の対応をさせていただきます。