ご自身の相続開始後のことが気になる方へ

相続開始とは、要するに、その方が死亡するということを意味します。

となりますと、表題の内容は何かといいますと、「『自分が死んだら、自分の財産の分配や、相続手続きそのものはどうなっちゃうのか?』という点で心配になる方へ」という主旨になります。

なお、本記事については、一般の方向けに、わかりやすい表現で記載することを心がけた記載としておりますので、この点はご了承ください。

さて、基本的な話を順不同ではありますが、以下、記載したいと思います。

○相続財産はあの世には持って行けません

・・・ごくごく当たり前の話ですよね?!

古今東西、金銀財宝の類いを持っていってしまった貴族などの財産家は誰一人としていませんでした(もしかしたら、オカルト的にはあるのでしょうか・・・?わかりませんが)。

ということで、ここは表題の通りだと思います。

○自分が死んだ後の相続手続はどうしたらいいのか・・・?

これは行政書士として、というよりも、一個人としての感想レベルにはなりますが、原則論から言いますと、それほど心配する必要はないのかな、という気がしております。

なぜなら、殆どの場合、誰かは亡くなった方の関係者はいるわけです。

一番卑近な例で言えば、法定相続人となる方の存在でしょう・・・つまり、配偶者や子という感じですよね。

とりわけ、配偶者や直系卑属(子、孫)がいる場合は、殆どの場合は心配は要らないと思います。

ただし、配偶者や直系卑属(特に子、子がいない場合は孫)が介助や介護を要する、あるいは制限行為能力者である、それから、仮にそういった社会制度上の枠組みに登録されていなくても、事実上該当するような場合は、話は違ってきますよね。

もっとも(この書き方、如何にも法律関係のようですが)、制限行為能力者であっても、後見人等が付されている場合は、その後見人等が対応可能な場合もありますので(例えば、未成年後見人、成年後見人など)、そこは事前に確認をしておけば良いのかな、という感じではあります。

とはいえ、法定相続人のうちで、基本的に健康で一世代下の方が現に対応されるような場合は、まずもって気にするようなこともないんじゃないかな・・・という話にはなるという感じです。

もちろん、行政書士だけでなく、一般的な士業者が、実際の相続手続を受任して代行することもできると考えられます。

○相続税の支払いが心配だ

一般的に相続税については、申告をしなければならない基礎控除を超過するケースと、その申告をすることによって受けられる特典(税計算上の特例措置)が考えられますが(他にも沢山あると思いますので、気になるようでしたら、当事務所提携税理士を紹介いたします・・・ここでは、あくまでもごく身近な言い回して記事を書いているという前提でいてください)、ザックリと言って、正の財産が基礎控除以上ということは、何らかの形で相続税納税は可能であろうと想定できるわけですね。

もちろん、例えば、金融財産が極端に少なくて、不動産なんだけれど、直ぐに換金(売却)できるかどうか・・・というケースもあるでしょうから、一概に納税可能、という形にはならないのかも知れませんが・・・。

それだとしても、もちろん、事前のシミュレーション自体を否定するわけではありませんが、いわゆる、都市郊外の自宅住居不動産程度であれば、あまりそこまで心配になることでもないのかな・・・という感じではおります。

○では何を気にするべきなのか

それはズバリ、遺言書を作成するべきケースか、遺言書を作成しておいた方が良いケースか(という判断も含む)、そこまでしなくても多分大丈夫だろうと思うか・・・といった判断をすることかと考えます。

最初の遺言書を作成するべきケースとは何かというと、こんなイメージです。

・前配偶者との間の実子がいて、現在配偶者と婚姻しているとか子(実子、養子)がいるケース。

→この場合、稀に前配偶者との実子を現在の配偶者と養子縁組していて皆さん仲良しなんです、みたいなこともありますが(実際にお出ででした)、一般的には、前配偶者との間で人間的な溝ができる場合もあるでしょうから(特に離婚をした場合)、そうなりますと、その実子と本人との間、あるいは、その実子と現配偶者や子との間で交流があるのかというと、そういったことは少ないと考えられます。遺言書を書いたとしても、その前配偶者との間の子に渡す財産がゼロ割合というわけにはいきませんが(もちろん、財産と言っても借金だけなので・・・は、ここでは想定外としますが9、少なくとも、円滑に相続手続をしたいよ、という点では十分に遺言書を作成するメリットはあります。

・現配偶者が認知症と診断されている(あるいは成年被後見人である)

→この場合、成年被後見人であれば言うに及ばず、成年被後見人でなくても認知症と診断されている記録が世の中に存在している限り、やぱり相続手続時の混乱を招来しないためにも、遺言書を書いておいた方が良いケースであるとは言えます。ただし、成年被後見人の場合で、とりわけ法定後見(さらには自治体から法定後見費用の援助を受けているなど)の場合は、遺言書を書くにしても、相応の社会的な側面を十分意識して遺言書を作成しておかなければ、逆に混乱を来すだけ、という点は意識をしておいてください(該当される関係者の方、何を言っているか、わかりますよね?)。

・成人している子や代襲者が成年被後見人などである場合

→こちらも上記と同じです(こう申し上げてはアレですが、社会的な立場を再確認して、その上で、必要な処置をされることをお勧めはします)。

・未成年の子がいる場合

→ご夫婦揃って、ごく簡単に自筆証書遺言でも良いと思いますから、それぞれで遺言書を作成しておきましょう。これは、学資保険に加入して、その学資保険の掛金の免除となりうるようなケース程度の確率ではありますが、やはり人の親として大切な所作なのかな、という気がしてなりません。もちろん、その子が成人した場合は、その遺言書をいったん破棄する旨の遺言書を作成する、あるいは前に作成した遺言書が自筆証書遺言である場合は遺言者本人が遺言書原本を破砕する程度に廃棄するれば良い(かも)というイメージです(ちなみに破砕や破棄は他人が行ってはいけません)。

・法定相続人に行方不明者・音信不通者がいる場合

→遺産分割協議自体ができなくなりますので、こうした方がお出での場合は積極的に書いておいた方が良いでしょう。もちろん、その音信不通者と再度連絡可能になれば、いったん書いた遺言書を前項と同様に遺言者本人が廃棄をすれば済む話です。

次に遺言書を作成しておいた方が良いケースとは、こんな感じです。

・連絡は取れるが不仲な人がいる場合

→これは、遺言者本人と不仲である場合も、法定相続人間で不仲である場合も、両方含みます。遺産分割協議はできるのでしょうが、その遺産分割協議が揉めて決まりそうにないとなると、結局のところ、相続手続が進みませんので、こうした場合は、他人(例えば、弁護士)の手を借りるなどをして、そのために要らぬ支出や気苦労が増える可能性も十分に想像できるというわけです。

・特定の法定相続人に多めに相続させたい、あるいは、少なめに相続させたい(第三順位相続を除く)

→例えば、複数の子のうち、自分の身辺の世話をしてくれた子に多く財産を渡したい、というイメージになります。まぁ、心情としては、なんとなくわかる気もします。逆に、この子は世話をしてくれなかったり、顔を見せに来てくれなかったので、他の子よりも減額したい、というイメージです(もっとも、人の親の立場の私見としては、できるだけ、そういったマイナスの連鎖を生じるような動機で遺言書を書くというのもね・・・という気はいたしますが・・・そういった状況をに至ったのは、他でもないアナタにも一因があったんじゃないですか?という意味合いでも・・・)。

・兄弟姉妹が法定相続人となる可能性が大の場合(子がいないご夫婦を含む)

→子供の頃は兄弟姉妹仲良くしていたとしても、大人の時間を過ごすに従って、必ずしも仲が良いというわけでは無くなることもあるとは思います(例えば、親の世話とか、実家のメンテナンスとか、いろいろなイベントをきっかけに)。そもそも論で、一族が近隣で暮らしていれば別なのでしょうが、離れていれば物理的な事情が作用して、人間関係に粗密が生じるのも高齢になるに従って有意に発生するものだとは思います。よって、兄弟姉妹が法定相続人となる可能性がある方、そして、とりわけ子がいないご夫婦については、やはり遺言書は作成しておいた方が良い、といえると思っています。兄弟姉妹といっても、何人かが被代襲者となっている場合は、事態としては、より深刻ではあります。お早めに作成をしておいた方が良いでしょう。ちなみに、子がいないご夫婦については、簡単でも構いませんので、直ぐに遺言書を作成をしておいた方が良いと考えられます。

・不動産その他分割することが困難な動産を所有している場合

→一番キレイに分けられるとすれば、それは現金(預金)であると考えられます。それ以外のモノ、特に不動産の場合は分割自体が困難となります。それは、不動産とは、仮に分割をするとしても、全く同じ条件で分けることが非常に難しいからです。よって、不動産を承継する方と、そうではない方が生じる場合(要するに、30坪程度の土地ぐらいを所有している場合など)、その不動産を売却して換金して分割するのであれば話は別ですが、その不動産売却自体がスムーズに行くのかどうかすら未来のことですから誰にも何とも言えないわけでして、そこも含めて、遺言書を書いておいた方がスムーズ、ということになるわけですね。もちろん、どの場合もそうなのですが、相続人全員で合意すれば、その遺産分割協議に従って相続手続できますので、そこまでナーバスになって遺言書を書くべき、ということでもないようにも思います。

・法定相続人ではない方に財産を渡したい

→例えば、子の配偶者や、孫(子も元気)、それから団体等に寄付をしたいなど、法定相続人ではないであろう方に財産を渡したい場合は、遺言書を書いておいた方がスムーズに行くと考えられます。もちろん、遺産分割協議において、第三者に渡す旨を合意することもできますので(もちろん、受け取る方も了承していないと具合が悪いわけですが)、それに委ねるという方法もあろうかとは思います。が、しかし、遺言者(というか被相続人)にしてみればお世話になったなぁ~と感じていたとしても、法定相続人の全員が共感するのかというと、ちょっとこればっかりは・・・わかりませんよね、となると、やはり遺言書を作成しておいた方がいいのかな、という流れになるとは考えられます。

上記以外にも沢山ケースはあるとは思われますが、遺産分割協議ができないと想定される場合、遺産分割協議での合意が困難と想定される場合、法定相続人以外の存在が登場してくる場合は、原則として書いておいた方が良いのかな・・・という感じになると思います。

詳細は、当事務所までご相談いただければと思います。

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ありがとうございました。