遺言書の作成スタイル

遺言書の作成には4つのパターンがございます。

それぞれに一長一短があります。

まずは、こんな風にまとめてみました。

(1)自筆証書遺言+自宅保管等

なんといっても、作成費用と保管費用が究極に安価です。

実質紙とインク代、といったところです。

本文は自筆で書かなければなりませんが、財産目録については一定の方式により自筆以外(例:パソコンから印刷)であっても作成できるようになりました。

毎年一回は書き直ししたい、とかの周期で作成をされたい方には、ある意味お勧めではあります。

ただし、重大なリスクが2点あります。

一つ目は、自筆証書遺言は、基本的にご自身で作成されるものですから、遺言に関する法律等を十分理解して作成しませんと、せっかくの遺言内容が無効になる可能性は出てきます。

しかも厄介なことに、その遺言書を用いる際には、遺言者本人からの修正は不可能ということになります。

よって、できるだけシンプルな内容での作成をお勧めしますし、もし不安がある場合は専門家(当事務所でも対応可能です)に文案チェックはしてもらった方が安心かと思います。

それから二つ目ですが、本当に自宅保管をされる場合に、遺された方の目に触れるような場所でないと、その遺言書が存在していなかったという前提で遺産分割をせざるを得なくなる、ということです。

この場合に「わりぃ、ココに入れておいたんだよね・・・」というわけにはいきません。

このリスクについては、例えばですが、信頼のおける方に遺言書を預けておく(しかも、厳重に保管いただけるのは当然として、遺言書を必要な際に直ぐに差し出してくれる存在の方でないと、結局、自宅保管と変わりません)、あるいは有料ですが士業などに預けておくのも一手でしょう(でも、預けたことを、ご家族の方に伝えておかないと、やはり適切なタイミングで遺言書が提示されないことになります)。

(2)自筆証書遺言+法務局保管

このパターンは、上記(1)のリスクのうち、次の点について改善されているプランです。

まず、遺言書の方式が整っていないと無効になる場合がある、と申し上げた点についてですが、法務局では形式的な内容についてはチェックしてくださいます。

そのチェックの範囲ですが、例えば、日付が明記されていますか、自署+押印されていますか、といったあたりです。

ただ、遺言書の内容自体についてはチェックしてもらえませんので、いきなり無効になるということなないにしても、内容的に法律に沿って書かれていない、というリスクについては回避できません。

よって、ココのリスク回避については、士業に遺言書の文案チェックを依頼するという方法が良いのかもしれません。

次に保管関連ですが、法務局ですので、基本的にセキュリティはしっかりしていることになりますし、誰かが遺言書を改ざんしただの、といったリスクは想定しなくてよいでしょう・・・。

逆に言うと上記(1)ですと、そもそも論で、その遺言書が本当にご本人の自由意思で作成されたのか(誰かから圧力はなかったのか)、という点からして、問題になることがあるということです(裁判にもなります)。

よって、この点は大丈夫ですし、保管料といっても、預入時に3,900円の手数料を支払うだけですので、極めて安価です。

ただし、幾つか留意点はあります。

まず一つ目に、法務局までご本人が行って手続きする必要があります。

どこの法務局に行くのかといいますと、住所地、本籍地、あるいは不動産がある場合はその不動産の所在地、について管轄する法務局、ということになっています。

それから、基本的に親族の方には法務局に預けた旨は伝えておきましょう。

預け入れの有無は、必要な際に相続人が検索することができますが、預け入れた点については伝えてあった方が無難といえば無難です。

原本だけでなく、法務局にてスキャンデータとしても保管されています。

(3)公正証書遺言

こちらは、公証役場において公証人に遺言書を作成いただくものです。

この方式の一番の長所としては、公証人という法律の専門家(元裁判官などの法律に精通した方です)が、遺言者の要望に応じた遺言書の文案を作成してくださいますので、イザという時に、その遺言書が法律上無効でした、というリスクが回避されることです。

それから、公証役場での原本保管、そして検索システムでの保管有無のチェックができますので、イザという時に紛失してしまうなどといった事態は回避できます(しかも保管料的な定期的に発生する費用はかかりません)。

さらに、基本的には公証役場において遺言書を作成するわけですが、公証役場まで行くことのできない方のために公証人が出張して遺言書を作成する、そして、署名もできない場合も公証人が遺言者の署名の代わりとなる手続きまで行ってくれる、という点も、他(1)~(4)にはない特長です。

ただし、遺言書の作成費用という観点にだけ注目しますと、一番高額にはなります(財産額等に応じて費用が計上されていきます)。

それから、公証役場という場所に自力で調整して行かれる場合は問題ありませんが、なんとなく気後れする可能性もあるかもしれません。

また、遺言書作成日に、証人を2名立ち会ってもらう必要があり、これは親族の方はなれないなど一定の制限があります。

もちろん、お隣さんに来てもらっても良いのですが、いずれにしても、一定の御礼は必要になることでしょう・・・。

公証役場にて証人を手配することもできるようです。

(4)秘密証書遺言

こちらも公証役場関連の手続きとなります。

遺言書を作成して封筒に入れて封をした状態で、公証役場で手続きします。

ポイントとしては、遺言書の作成方法については、上記(1)と異なり限定が無いことです。

つまり、パソコンで印刷した遺言書であっても、法律には適合していることになります。

これが上記(1)や(2)にはない、最大のメリットといえるのかもしれません。

逆に言うと、上記(1)や(2)の場合は、基本的には全文を自筆で作成しなければなりませんので、あまりにも文字数が多い場合に、誤記等の問題が出てくることとなります。

仮に、今回作成する遺言書を、前回から少しだけ修正した内容にしたいという場合であっても、上記(1)や(2)の場合は、書き直し時に誤記リスクが伴います。

この点を回避することができます。

遺言書を厳封した後に、公証役場で証人2名と公証人の面前で公証役場の用意する封筒に封入の上、さらに厳封することになります。

よって、公証役場での手続き的な面としては、上記(3)と同等の手間がかかります(公証人手数料は、上記(3)よりは安価です)。

それから、遺言書は先に遺言者側で作成することとなりますので、上記(1)や(2)と同様に法律上無効な内容が含まれるリスクがあります。

この点について補足しますと、上記の通りパソコンで印刷した遺言書であっても問題ありません、ということになりますので、例えば、法律の専門家に遺言書文案の作成を依頼して印刷までしてもらい、その後の対応を自ら行っていくという解決方法もあります。

お問い合わせはこちら↓からお願いいたします。

ありがとうございました。