遺言書ほかんガル~は万能選手か?!

法務局が遺言書保管制度を実施しております。

遺言書を保管する際に一回あたり3,900円かかりますが、継続して支払う費用はありません。

なんと、死亡届が出されると、保管時に指定した三箇所まで法務局からお手紙が届くという超優れた仕様になっています!!

遺言書保管を取り扱う法務局(横浜市内であれば馬車道にある横浜地方法務局本局)まで、遺言者本人が行かなければならないという制約はありますが、まぁ、外出が何らかの形で可能なのであれば、それも全く不可能というものではないのかもしれません。

(ただ、これが、法務局まで何十キロメートルもあります、あるいは、船に乗って・・・という地域だと、ちょっとわかりませんが。)

実は、この制度は大変利便性が高いのですが、要するに自筆証書遺言の制度の枠内で設計されているものと考えておりますので、本質的に適用が難しいケースもあるのではないだろうか・・・と考えております。

まぁ、それでも、大部分の場合は有利かとは思いますので、話半分程度で以下ご覧いただければと思います。

(1)難しい点の本質

通常であれば、戸籍等で法定相続人が確定していることが前提となります。

しかし、例えば、戸籍が手に入らない場合はどうでしょうか・・・?

戸籍が手に入らないとは、例えば、災害や戦災で戸籍が失われている場合もあるかもしれません。

例えば、日本国籍を離脱した方がいる場合があるかもしれません。

最終的には、様々な手段で法定相続人を確定させていくこととなりますが、手間がかかるのは容易に想像されます。

(2)第三順位相続の場合

戸籍の広域交付が開始されて以降、直系親族の戸籍を収集することは大変容易な状況となりました。

しかし、広域交付は第三順位相続には対応をしていません。

そこがつまり、遺言公正証書と決定的に異なることになるのですが、遺言公正証書は一旦作成されてしまえば、あとは、相続開始が戸籍により証明され、あるいは、受遺者や遺言執行者などの最低限の戸籍を集めれば、その遺言書に基づいた手続きについては、第三順位相続の法定相続人全員の戸籍類は必要はないことになります。

前の記事でも書きましたが、今後は第三順位相続となるケースが増加してくることが想像されます。

そうした場合、自筆証書遺言で果たしてスムーズな手続きができるのでしょうか・・・?

(しかも、ここでは触れませんが、ある一定の場合は、不動産の名義変更などで先着優先の原理が働く可能性があります。)

(3)代理人に頼めない

保管されている遺言書の写しやその存在については、代理人には頼めない制度設計となっています。

法務局の窓口には「予約をして」関係者本人が行く必要があります。

郵送の場合は、その回答書は依頼者の自宅に届きます。(左記は当然のことでしょ、と思われるかもしれませんが、自宅=住民票上の住所、において、郵便を正常に受領できないような場合はどうするのでしょうか・・・?)

以上のことから、あくまで、平穏な状況で第三順位相続以外のケース(かつ戸籍類が容易に取得可能な場合)には有用な制度だとは想像しますが、それらの条件を満たさない場合は、やっぱり遺言公正証書の作成の方が有利となる可能性も出てくるのかもしれません・・・。

あまりここら辺の相続手続の実務面から書いてある記事がありませんので、敢えてここでは書いてみました。

結局のところ、お子様がお出でのごくごく円満なご家庭であれば遺言書を本当に書く必要があるのかどうか・・・(このケースが大多数だと個人的には思いたいです・・・)から始まって、むしろ、そうではない可能性が高いと思われるからこそ遺言書を書きたい、ということであれば、結局のところ、それは自筆証書遺言(自宅等保管であっても、法務局保管であっても)ではなく、遺言公正証書の方が現時点では万事無難なのかな、という印象は漠然とあるようには思ったりしています(あくまでも当職の個人的な感想です)。

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ありがとうございました