遺言書保管制度について

先日、遺言書保管制度を実際に利用して参りました。

当事務所では、対応業務の一つとして、遺言書作成を掲げております。

遺言書作成については、自筆証書遺言の作成支援、公正証書遺言の作成支援などを行っているわけですが、その行政書士本人が遺言書を書いたことがありません・・・、というのでは、やはり鼎の軽重を問われかねないように思いましたので、この度、自筆証書遺言を作成をして保管申請をしてきた次第です。

結論から申し上げますと、自力で対応できる部分でありますし、ある意味簡単ではあるとも思います・・・が、様々な理由で、皆様におかれましては、専門業者(当事務所のような者ということです)の支援を受けられた方が楽と言えば楽なのかな、という気がしております。

行政書士本人が自筆証書遺言を作成してから遺言書保管制度を自力でやるのは大変ですよ・・・、とも言えませんし、まぁ、人によって何がネックとなるのかは主観の部分もございますので、一概には言えませんですし・・・。

企業秘密というほどではありませんが、全部を本投稿記事に書いてしまうのもどうかと思いますので、以下、要点のみではありますが、記載をさせていただきます。

[気が付いた点]

①意外に財産目録の作成が大変です!

本当に超シンプルな遺言を目指すのであれば、財産目録も作成せず、便せん一枚で遺言書に必要な全ての事項を記載することができます(要するに「遺言者は、妻○○○○に全財産を相続させる。」系の内容です)が、そういった選択をされる方は少な目かな、という気がしております(例えば、遺留分侵害請求権との兼ね合いもあります、その他にも考慮しておいた方がベターな点もありますしね・・・)。

そうなると財産目録を作成した方が良いということになります。

その財産目録についての考え方ですが、本当に遺言書での遺産分割に注目した最低限の記載でも構わないわけですが、その対極にある考え方として、とにかく自分が外部と契約している事項について全て一覧化しておく、という方法があるように思っています。

つまり、資産だけでなく、負債の可能性についても注目する、というわけです。

負債といっても、いわゆる誰かからお金を借りていますよ・・・、という生々しい話ではなくて、クレジットカードの番号と発行会社名を一覧化しておくだけでも、仮に相続人が様々な解約処理を行う際に、その財産目録記載の一覧に沿って対応ができますよね、というイメージで捉えてください。

そうなりますと、財産目録の記載事項としては、結構な分量になる・・・ということになるかもしれません。

ということで、パソコンで作成できるのであれば、その方が楽だと思います。

②自筆証書遺言の全文を自筆で書くのは(とにかく)大変です!

わたくしのような者(わたくしは勤め人でもありますが、勤め先は全部パソコンを用いていますので、筆記具による筆記は、日常ではほとんど行いません)ですと、要するに字が下手です。

もともと、大変にお恥ずかしい話ですが、小学生の時、正しい鉛筆の持ち方に従わず、我流で慣れてしまったため、それはもう、先生が板書なさった事項をノートに書き写したり、原稿用紙に作文を書くのが、利き手の右手が疲労感で音を上げるほどに大変でして、それはもう、今回の遺言書全文自筆というのも、結構重い課題でした。(笑)

そのうえ、上述のように、日ごろは字を書きませんので、更に文字自体が下手くそになってしまっており・・・。

とても、人様にお見せするのが恥ずかしいぐらい(本当にこちらもそのような字体の書面であることが恥ずかしく、また法務局の方も、お仕事とはいえ、読みずらい字での遺言書にて、大変失礼いたしました・・・、というぐらい体たらくです)ではありましたが、なんとか書ききりました・・・幸いにして、誤字脱字は防げましたが、実は、これでは、字の判読ができないのではないのか?と思いなおして、そういった観点で改めて書き直したページも正直ございました。

例えばですが、「遺言者は・・・」の書き出しを見ていますと、「あれ『遺は・・・』ってなんだっけ?」と、つい30分前に自分自身が書いた文字を見て、本人が迂闊にも一瞬思ったぐらいの下手さ加減です。(笑)

アラビア数字を改ざんされて・・・とか、漢数字(一、二、三や十あたりですかね)を改ざんされた・・・という事例は読んだことがありますが、字が下手なために、意味の通らないような日本語文として取り扱われてしまったために遺言内容が無効、というのは、ちょっと読んだことが無いぐらいですので・・・もしかしたら貴重な問題点を提起するところでありました。

③法務局への申請用紙を書くのは(確かにちょっと)大変です!

今回は自分のために作成していますので、資格上何ら問題はないのですが、法務局に遺言書保管申請を行う用紙がございまして、そこにアレコレ記載をしなければなりません。

当然、遺言書の内容と照合して互いに矛盾が無い記載を求められることもありますし、そもそも、その申請書で問われている事項について、正確に理解できないと、法務局に行った際に補正(記入の訂正や追記)を求められることになります。

これを自力で国民の誰もができるのかというと・・・、そこは、やっぱりハードルがありそうかな、という気がいたしました。

自力で制度利用される状況を想像いたしますと、おそらく典型的な事例としては、依頼者の方が自力で書くことのできる部分については、ご自身で記入され、そうでないところは空白のままにしておいて、当日、法務局において追記するという状況が好適なのかも?、と想像しております。

まぁ、こういったことは、各種行政手続きを士業者の支援を受けずに自分でやってみよう!という際に、わたくしも含めて、よくあることかな・・・、という感じで思っております。

(当事務所との関連で考えますと、この遺言書保管の申請書等の作成については司法書士の専属業務という観点から、ご依頼があれば、この部分の作業は、提携司法書士に作成依頼する形をとるイメージで思っております。)

いずれにしても、そもそも遺言書を自力で書けるのであれば、この申請用紙への記入は、それなりにはできそうかな(なので、わからないところは当日法務局で教えてもらって追記するのがベストかな・・・)、と言ったところではあります。

④法務局に行って保管が完了するには一定の時間がかかります!(半日仕事ですね)

遺言書保管業務を行う法務局(遺言書保管所)がご自宅の近所にありますよ、ということであれば話が別ですが、横浜の場合は、馬車道駅前にある横浜地方法務局に行く必要があります。

当事務所がある金沢区からですと、京急線で横浜駅まで一旦行って馬車道駅で下車する方法もありますし、京急線杉田駅又は金沢シーサイドライン線新杉田駅から根岸線で行くのであれば桜木町駅か関内駅から向かうという方法もあるかな、あとは上大岡駅から市営地下鉄で行く・・・というのが一般的な交通経路である気がしています(ちなみに、わたくしの場合は、日ノ出町駅から歩きました)。

それで、ごくごく普通の人(特に歩行など移動について不自由のない方)であれば何も問題はありませんが、遺言書を作成した本人が法務局に行かなければなりませんので、ここで、そもそもの問題が生じてくるようには思います。

それは、例えば、足腰が弱ってきています、自力では歩けません、病院とかから外出が許可されません、車を運転していくことはできません、ご自身で法務局の往復ができません(地理不案内)、といった場合に、どうするか、といったところでしょうか・・・。

それでも親族の方などが遺言者ご本人の往復を送迎をされる場合は良いのかもしれません(ここのあたりは、様々な事情によりますね・・・)。

今回わたくしの場合は、事前に補正が生じないように準備をして参りましたが・・・それでも午前9時の予約時間にあわせて始まった最初の係官の内容チェック(これは対面で行い、必要応じて質疑応答があります)に約30分、それからダブルチェックをしますので1時間程度お待ちください・・・、ということで、待合席(横浜地方法務局の場合は供託課と共用の部屋になっていました・・・ので、供託関連で来られていた方々も待合席を使われておりました)にて待つこと1時間、最終的に遺言書保管官の方から保管証を受領して手続きが終わったのが、おおよそ10時半前でしたので、正味1時間半かかりました。

よって、横浜のどちらからお越しになるのかにもよりますが、ご自宅からですと往復時間含めて概ね半日仕事にはなりそうですね・・・、といったところです。

⑤遺言書の内容についても十分把握しておく必要がありそうです!(といった士業サポートが求められると思います!)

基本的に、遺言書の形式的な審査(申請書、遺言書、財産目録が遺言書保管の法定要件を満たしているか、それから民法に規定の自筆証書遺言の要件を満たしているか)をする以外に、その実質的な遺言書の規定内容については、法務局は質問応答もしないし、審査もしませんよ、となっております・・・が、実際には、遺言書の各条文の規定に対応した財産目録の該当記載が存在するか、といった観点では丁寧にチェックをしてくださいました。

よって、必要な部分については、係官からわたくしへの質問もございました。

それなので、遺言書を作成するという意味での本来的な意味合いで言えば、遺言者自身が遺言書の中身について全部熟知している必要がある・・・、とは言えそうです。

ここで申し上げたいのは、例えば、士業者に遺言書案文の作成を依頼して、実際にその内容を納得して自筆証書遺言と財産目録を作成したとしても、係官からの質問に対して、法律的な意味合いを意識した説明についても法務局での遺言書保管時に説明をすることが暗に求められる場合も出てきそうですよ・・・、ということになります。

このように、自筆証書遺言を法務局にて保管いただける制度は、他にもメリットがたくさんありますので(例えば、裁判所での検認が不要、相続開始後に予め指定した連絡先にプッシュで郵送通知をしていただける、など・・・)、皆様におかれましても、遺言書作成の際には有力な選択肢としてご検討いただければと思うところですが、上述のような、幾つかの留意点もあるようには思いました。

ちなみに、法務局の係官の方は、皆様親切に対応くださったので、本当に感謝感激でございました!

このような部分を含めて、当事務所ではスムーズな手続き完了に向けたお手伝いをさせていただけるものと思っております。

お問い合わせはこちら↓からお願いいたします。

ありがとうございました。