遺言書保管制度の長所

画像は法務省のサイトより画面ショットを撮りお借りしております、ありがとうございます。

遺言公正証書にはない、特定の場合によっては相当使える機能が、法務省の遺言書保管制度にあるんだなと思いましたので、記事を投稿しておきたいと思います。

とはいえ、それなりには限定された条件ではあるけれども(・・・詳細には語れませんが、そもそも論で、その母集団を考えると、本当に稀有かというと、そうではなくて)結構使い勝手の良い制度が、それが通知制度なのかなと思っております。

通知制度は、全国の戸籍担当部局と連動して、死亡届が提出されると、プッシュで遺言書保管時に指定した1名に郵送による通知が届く制度です。

これが、ごくごく普通の場合であれば、なんのこっちゃと申しましょうか、そんな事実は親族含めて周知ですけれど・・・といったことになろうかと思います。

ただ、この機能が非常に効果を発揮する例としては、こうしたケースがあるのではないかなと思いました。

それは、

・受遺者(法定相続人以外の方)が財産を受領することを強く遺言者が希望している場合

かと思われます。

これは、例えばですが、実は遺言者と推定相続人(≒法定相続人というべきなのでしょうが、未だ亡くなっていなければ確定しておりませんし、そもそも同時死亡の推定などで代襲相続や相続人順位が変わることもありますので)との人間関係が上手くいっていない場合において、遺言者にしてみれば、推定相続人には財産を相続させたくない、このため受遺者を遺言書で指定したい場合が考えられます。

もしかすると、推定相続人のうちの特定の人に相続を指定して(もちろん、遺留分侵害請求権がある場合もありますので、現実にその通りになるのかは別として・・・まぁ)、その特定された推定相続人が遺言者よりも先若しくは同時に死亡していた場合に、受遺者を指定しておく、という場合においても、同様なのかなとは思います(というか、こちらの方がむしろメリットある場合もあるのかも・・・)。

受遺者は、おそらく遺言者と懇意にしているでしょうから、その死亡に関する事実を知るのも、それほど断絶されたこともない可能性もあるのでしょうが、例えば、昨今の疫病流行時には、親族ですら臨終の場に立ち会うことができなかった、という場面があったとも聞きますので、今後の社会的情勢によっては、その死亡の事実が周囲に結果的にせよ知られる機会は減る可能性もあるかもしれません(仮にそれが親族であったとしても・・・)。

ところで、実は上記のような受遺者に対して確実に相続をさせるためには、もう一つの方法として、遺言書において遺言執行者として受遺者を指定しておく必要がある(どちらかというと、受遺者のみをしてしてある状態にしておく)ようには思います。

なぜなら、この遺言執行者として受遺者をしてしておかないと、諸手続きの際に法定相続人のハンコが必要になる可能性もありますので、そうなりますと、そこでハンコがもらえません!とか、ハンコを貰うためにわざわざリアルに接触しなければなりません(仮に代理人経由だとしても)という事態が生じてくるかもしれません。

それでもなお、遺言書に書かれた内容を実現するためには、正に遺言書の存在を関係者が承知している必要があると思います。

もし、遺言書が作成されていたとしても、それが現実に存在しているものとして扱われなければ、結局のところ、遺産分割協議をしなければならない、という事態になる可能性もでてきます(特に自筆証書遺言を自宅保管していた場合など)。

そこで、冒頭の通知制度が効果を発揮するのかなと思いました。

推定相続人ではない受遺者を指定して、なおかつ、その受遺者を遺言執行者としても指定した場合には、死亡時通知先も当該受遺者に指定しておく・・・こうしておけば、そもそも遺言者が亡くなったという事実を、法定相続人から連絡を受けられないようにする、という事態を回避することができるように思います。

これは公正証書遺言の制度にはない最大の特長だと思います。

そして、仮に推定相続人のうち特定の人を先ずは相続させる旨記載して、遺言者よりも先に又は同時死亡の場合は受遺者に相続させる、とした場合(それから、遺言執行者の指定も同様の順位としておく)についても、その推定相続人は、よほど遺言者と日ごろから接触や連絡がありません、という関係でない限り、死亡時通知の指定は受遺者にしておけばいいのかもしれませんね。

(受遺者が転居した場合は、当然ですが、その都度遺言書保管をした法務局に手続きが要りますので、転居と手続きのタイミングによっては、通知が叶わないこともあるかとは思います。)

こうなってくると、ある種のプログラミング的な要素になってきますが、こうした点を考慮した遺言書保管制度の制度利用動機があっても良いのかもしれません。

もっとも、遺言書保管制度は、ちょっと別の意味で利用者を選ぶようには思いますので(つまり、本人が法務局において自力で手続きを行うことが前提となっているため・・・そもそも法務局に行くことができない、意思疎通ができない、といった場合などは実質的に利用対象外となる)、誰もが利用できるというわけではないのかもしれませんが・・・。

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ありがとうございました。